資本金を減資する影響とは。メリットとデメリットについて理解しよう

資本金を減資すると聞くと、会社の経営が悪化しているのではないか、などとネガティブなイメージになってしまいますが、実際のところ減資にはメリットもあります。減資する影響と減資のメリットとデメリットを理解したうえで、減資について検討しましょう。

減資のメリット

税金を負担する額が減る

減資と聞くと、業績が悪くなって会社の規模を縮小させるのでは、などというネガティブなイメージを持たれてしまうことがあります。実際には、会社にとってネガティブなことがあるかどうかは関係なく、減資をするということにはメリットがあるのです。

減資のメリットの1つが税金を負担する額が減るということ。節税対策として多くの会社が減資という手段を利用しています。節税対策として減資を利用する場合、資本金1,000万円、資本金3,000万円、資本金1億円という3つのボーダーラインを超えているかどうかがポイントです。

資本金1,000万円以下に減資する場合の節税メリット

☑ 1.会社設立時の資本金は1,000万円以下の場合、創業後2事業分の消費税が免除になる。
☑ 2.法人住民税の均等割額が減る。

資本金3,000万円以下に減資する場合の節税メリット

☑ 1.機械などを取得した際、法人税の税額控除を受けることができる。

資本金1億円以下に減資する場合の節税メリット

☑ 1.法人税の計算の際に、軽減税率を利用できる。
☑ 2.交際費800万円まで全額を損金にすることができる。
☑ 3.30万円未満の減価償却資産は全額損金算入できる(上限年間300万円まで)。
☑ 4.特定同族会社の留保金課税が免除になる。
☑ 5.欠損金の繰越還付を受けることができる。
☑ 6.法人事業税の外型標準課税が免除になる。
☑ 7.法人住民税の均等割税金が安くなる。

※これらの節税メリットが適用されるためにはさまざまな条件が必要となりますのでご注意ください。実際に減資を検討する場合は税理士などの専門家と相談しながら行いましょう。

累積赤字を補える

累積赤字を補うということは、貸借対照表の資本金と繰越欠損金を相殺するということです。つまり今期1期だけの決算発表の赤字ではなく、これまでに積み重なった赤字を補てんするということになります。

そもそも累積赤字を補う理由の1つが、将来の配当原資を確保しやすくしたいということ。例えば新規の上場企業が上場前に創業時から積み重なった資本金と繰越欠損金を相殺することで、上場後の配当原資が確保しやすくなるということがあります。そしてもう1つの理由が貸借対照表の見た目を整えること。こうすることで累積赤字はなくなるので、会社の評価としては赤字会社ではなくなります。

貸借対照表の見た目を整える目的

貸借対照表は、銀行や取引をしている企業に対して明かされてしまうことがあります。貸借対照表を開示された時にもし繰越欠損金がたくさんあったら、将来性を見込まれず信頼度が低下します。

貸借対照表の見た目を整えると、実際に黒字になったということにはなりませんが貸借対照表上では赤字ではなくなりました。そうすることで新たに銀行からの借入もできるかもしれません。前向きに事業を頑張っていくための原動力にはなります。しかし常識を外れるくらいに大きな減資をすると信頼度が低下する可能性がより大きくなるので、減資をするなら常識の範囲内に抑えておくということを心がけましょう。

減資のデメリット

会社の信用度が低下する

本来は資本金の金額の大きさは会社の信用度とは関係ないのですが、会社の信用度を資本金の大きさで判断する人は多いです。そのため減資をすると会社の信用度が低下するというデメリットがうまれます。

例えばほとんどの会社のホームページには資本金の金額が開示されていますが、売上規模や会社財産などの詳細を細かく開示している未上場会社は非常に稀です。そのため評価する側は資本金の金額を見て会社の信用度を確認するしかないという状況になります。

株主の理解を求める必要性がある

減資する際には、株主の理解を求める必要性があります。一株あたりの価値は理論的には変わらないと説明しても、減資には信用度が低下するというネガティブなイメージが強いので、そのデメリットを心配する株主を納得させることは難しいです。

最初から大きな金額の資本金で創業した会社は稀で、ほとんどの会社は設立時は無理のない金額の資本金からスタートして、順次増資をしながら現在の資本金になっているというパターンが一般的。減資をするということは、その経緯を振り出しに戻してしまう印象を与えるため、株主の反発や疑念が起こってしまい説得が難しくなることがあります。

減資をする手順

株主総会で特別決議を行う

減資を決めてから1番初めにすることは、株主の賛成を得るために株主総会の特別決議を開くこと。資本金の額を減らす際に株主に対して払い戻しの行為をするなど、会社の財産が減ってしまう場合には株主総会で特別決議を行う必要があるのです。

会社の財産が減ってしまうというのは、株主にとっては会社の将来性を心配する不安要素となってしまいます。そのため特別決議を行って内容を説明するとともに株主の賛成を獲得して減資を成立させなくてはいけません。

特別決議を必要としない場合

☑ 1.減資を定時株主総会にて決議する場合には、資本金の減少額が定時株主総会の日の欠損金額を超えていなければ普通決議で大丈夫です。
☑ 2.資本金の減少と同時に株式を発行すると資本金の額が減少しないということがあります。その場合は特別決議の必要性はなくなるので、取締役会の決定もしくは取締役の決定で大丈夫です。

債権者保護手続きを行う

会社が減資をするという旨の公告や個別通知をしてから1カ月間、債権者に対し意義を述べるための期間を与える必要があります。そして意義を述べた債権者に対応し、減資の効力が発生。そして登記申請となります。これらの手続きのことを債権者保護手続きといいます。

準備期間等も含め、手続きを開始してから減資の効力が発生するまでに最低2ヶ月は必要です。債権者保護手続きを短縮することはできません。債権者保護手続きの具体的な手順は以下の通りです。

債権者保護手続きの手順

☑ 1.債権者に対して官報公告をする。(減資の内容や最終の貸借対照表の開示場所など)
☑ 2.把握する債権者に対して個別催告通知をする。(公告と通知内容は同じ)
☑ 3.意義を述べた債権者に弁済等で対応する。
☑ 4.減資の効力が発生。
☑ 5.登記申請する。

実際にあった減資の例

大規模な減資を行ったシャープ

経営再建中の家電大手であるシャープは2015年6月の株主総会にて、約1218億円の資本金を5億円に減らすという方針の決議申請をして承認を得ました。本来は資本金1億円に減らして中小企業とする計画を立てていましたが、批判を受けたため5億円にとどめたそうです。

中小企業になると、法人税の軽減税率が適用されるなど、税制上の優遇を受けることができます。しかし資本金5億円以上では大企業とみなされ、税制上の優遇を受けることはできません。しかし大規模な減資を行ったことで、累積赤字の穴埋めをすることができ資本政策上のメリットを受けられるようになりました。

資本政策上のメリットとは

資本政策上のメリットは、減資をすることでその後の資金調達が行いやすくなるということ。まずは減資によって累積損失を解消し、そして金融機関等から支援を受けて資本を増強することで財務体質の強化を図ることができます。

中小企業化した吉本興業

芸能プロダクションの大手である吉本興業が、資本金約125億から1億円に大幅に減資するということが2015年6月の株主総会で承認されました。吉本興業の説明は、「取り崩した資本金を長期的な投資に回すことが目的」だそうです。

資本金が1億円になるということは中小企業としてみなされるため、資本政策上のメリットとともに税法上のメリットも受けられることになります。税法上のメリットは、同じ利益であっても納税額が少なくなるということです。

減資は裏技的な方法である

減資をすると会社の信用度が低下してしまうなどよいイメージを持てないかもしれませんが、節税になったり累積赤字の補てんをすることができたりといろいろなメリットがあります。これらのメリットや信用低下などのデメリットも理解したうえで、減資について考えてみましょう。

減資をしたことで実際に赤字経営だったのが黒字経営になったということではありません。貸借対照表の見た目などから会社の評価が赤字ではなくなったということなので、減資は裏技的な方法だということもよく理解しておく必要があります。

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