資本金1億円の境界線で大きく変わる。税法上の有利な点を知ろう

資本金1億円という数字で様々な税法上の扱いが変わってきます。会社を設立するときや増資または減資する場合において、資本金1億円以内であることが大きなポイントなのです。税法上のメリットについて詳しく知り、転職時に有利な会社を選ぶ参考にしましょう。

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資本金1億円以下の優遇と条件

法人税の税率が大幅に削減される

一般的に会社に関して大企業とか中小企業という呼び方がありますが、税法上の分類としては資本金1億円以下を中小企業といい、1億円を超える企業を大企業といいます。この税法上の分け方で会社にかけられる法人税の税率が大きく変わってくるのです。国の制度として多くの企業の育成を図る意図もあり、中小企業の法人税は資本金が1億円以下だと大きく削減されています。

通常は30%の法人税がかかりますが、課税所得が800万円以下に対して22%のところが18%の税率に軽減されます。(軽減税率)

具体的に節税計算をすると【課税所得800万円×(30%-18%)=96万円】になり、100万円近い税額が節税できることは、かなりのメリットではないでしょうか。

法人事業税の外形標準課税が対象外になる

企業が赤字を出してしまった場合でも外形標準課税は払わなければいけないものですが、資本金1億円以下の企業であれば、その納付義務が免除されます。

外形標準課税とは法人事業税の課税制度のことです。法人税が企業の収益に対する税金であるのに対し、外形標準課税は企業側も地方公共団体からの様々な公共のサービスを受けていることに対して、赤字である等の収益に関係なく公平に税金として徴収されるものです。(2004年税制改正)

外形標準課税の課税対象は文字通り資本金をはじめ会社の床面積や従業員数、そして会社の付加価値等の外観から客観的に判断したものが基準となります。ところが、資本金が1億円以下の中小企業はその対象から外れることになっています。(平成16年税制改正)

機械購入の際、減価償却費にプラスできる

新しく機械などの資産を購入した際の減価償却にプラスして、特別償却扱いができます。

・減価償却について
企業の会計処理上とても大切な会計手続きになります。時間の経過や使用していくことで価値が下がっていく固定資産(例えばパソコンなど)を企業が購入した際、その取得費用を耐用年数に応じて費用として計上するものです。ですから同じ固定資産でも土地などのように時間の経過に伴なって価値が減少しないものは減価償却扱いはできません。また耐用年数についても実際使用できる期間ではなく、法律で品物ごとに決められています。(法定耐用年数)

パソコンの法定耐用年数について

サーバー用は5年、それ以外は4年です。またデスクトップと本体が別れているものは、ディスプレイは事務機器扱いで5年、本体は4年となります。そしてパソコンの耐用年数4年を経過したあと修理してパソコンを使用した場合は、その修理費を4年で減価償却します。新品に買い替えた場合は購入金額を4年で減価償却します。このようにパソコンひとつでも減価償却の扱いは違ってきます。

減価償却のメリットは毎年の企業の利益からかかった金額を費用として減額することで、法人税を抑えることができるのです。

特別償却とは、通常の減価償却費以上の超過した償却費を計上できるもので、購入した資産の取得価格の一定割合を乗じた金額を加えて、必要経費として計上できます。

費用の一部を法人税から控除できる

企業が試験研究費として出費した一部や教育訓練費用の一定の割合額を、本来支払う法人税から控除できるものです。また交際費についても事業年度に応じて一部損金算入ができます。様々な節税のための手段をとることができるのは、とても大きなメリットでしょう。

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親会社の資本金が5億円以上の時適用されない

資本金が5億円以上の企業は会社法上大会社といわれますが、その完全子会社である企業では資本金が1億円以下であっても、適用されるはずの優遇措置のいくつかが削減されるように、平成22年度の税制改革によって改正されています。(グループ法人税制)

上記に挙げた優遇措置の中でも以下のことが適用外となります。
☑法人税の軽減税率
☑交際費の定額控除

資本金1億円超のデメリットと優遇適用手段

法人事業税の外形標準課税が適用される

資本金が1億円を超えてくると会社規模としては大企業といわれるわけですが、これにより税制上優遇されていたものはすべて撤廃されてしまいます。

特に法人事業税である外形標準課税は企業の赤字が出ても払わなければならないものなので、これが適用されるのはとても大きな差に繋がると言えるでしょう。

資本金1億円以下に減資すると適用を受けられる

大企業であっても諸事情を考慮して資本金の減資が望ましいのであれば、決算期末までに資本金を1億円以下にすることによって、上記の税制上の優遇措置を受けることができます。

減資のメリットは節税だけでなく、累積赤字の補填ができることです。節税においては今まで払っていた税金が、数百万円から億単位で変わってくる可能性も十分にあり得ます。

また累積赤字の補填では、貸借対照表の資本金と繰越欠損金が相殺されることになります。例えば企業が株式上場する際に創業時からの累積欠損金と資本金を相殺することで、上場した後の配当金の原資を確保しやすくなるのです。

また貸借対照表は金融機関や取引先に開示されますので、繰越欠損金があれば会社の安定性などの信用性を損なう恐れがあります。ですから、とても大きなメリットを生むわけです。株主に対してお金を返金する訳ではありませんが、大きな意味では節税や赤字補填ができることで、会社の経営も安定することにつながり、株式配当などとして還元される可能性もでてきます。

実際に記憶に残るところでは、2015年当時資本金1218億円の大企業であったシャープが経営破綻を回避するのに、一時資本金を1億円まで減資するという状況がありました。しかし諸事情もあり、結果資本金を5億にすることになったのですが、減資することで累積赤字の補填ができたわけです。(※現在は買収により海外企業の子会社化され資本金50億円)

このように資本金を減資するという方法は、企業が生き残るひとつの大きな手段ともいえます。手続き方法としては株主総会の特別決議(※)や債権者への公告が必要です。かかる期間は2ヶ月ほどで費用25万円ほど。まずは司法書士さんへ相談するのが良いでょう。
※減資する金額が欠損金額以内であれば株主総会の普通決議となります。

資本金の設定額における社会変化の背景

大きな資金がなくても事業を興せる社会

かつての最低資本金制度において株式会社では1,000万円、有限会社では300万円が起業するのに必要でしたが今は廃止されました。大きな理由の一つに、産業構造が製造業中心からサービス業へ変化してきたことが挙げられます。

事業を興すときに製造業はまず工場をつくって、そこに機械を入れていくのでかなりの資金が必要になります。一方サービス業においては、例えばIT産業のように大きな設備投資をしなくても事業を興すことができます。このように今の社会情勢においては、資金を多く必要としない起業形態が多勢にあるのです。

企業の信用判断に資本金額をあまり気にしない

資本金の金額については、上記の社会状況からも必ずしも会社の実態、実力がそのまま資本金に反映されているわけではありません。もともと7割近い中小企業が赤字を抱えているところに税の負担軽減として取られている政策ですが、中には中小企業といっても、減税の優遇措置を受けなくても十分税金の支払い能力のある企業もあります。

つまり税金を払う実力はあっても、税法上の優遇を受けるために資本金をあえて1億円以下にするという行動は、会社の意思が優先されていると言えるでしょう。取引先や金融機関も企業の資本金の額をもとに企業の信用度をはかるにはズレがあることから、それを判断材料にはしない傾向がでてきています。また政府の税制調査会においても、「企業規模を見るのに資本金の意義は低下してきている」という見解があるようです。

税法上の優遇を総合的に判断して資本金を設定する

資本金を設定する際のポイントとして、資本金額での信用性はあまり意味のないものになってきています。ですから資本金を1億円以下にすることで税制上の優遇措置を受けることができるのであれば、それがまず合理的でしょう。私たちが就職や企業投資(株式投資)などをする際も、資本金の額が企業の力ではないことは理解しておきたいところです。

現状会社の資本金設定においては1億円の境界線に限らず、1,000万円や5億円などそれぞれの段階に税法上の優遇措置がとられています。外見上の体裁だけにとらわれることなく総合的に判断しながら、経営上のメリットを最大限に生かせるように企業のあり方を考えることが必要です。その姿勢が、今後の企業が生き残るひとつの分かれ道になっていくのではないでしょうか。

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