赤字なら法人税はゼロになる。企業会計と税務会計の違いに注意しよう

会社を経営するなら、納める決まりの法人税。所得の無い赤字でも、納めなくてはいけないのでしょうか。または、納めなくてよい場合もあるのでしょうか。納税の有無は、企業会計と税務会計の計算の違いにあります。所得の計算法を知り決算申告に備えましょう。

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赤字になってしまった場合の法人税

赤字の年の法人税の支払いは基本ゼロ

法人税は個人でいう所得税にあたります。税率は違いますが、個人も法人も同じく所得に対して課せられる税金ですので、所得の無い赤字になってしまった場合には税金の支払いが基本的にはありません。しかし、通常の会計(企業会計)と税務会計では計上する項目が違うので、会計上の利益は赤字でも税務会計上の利益は黒字になり、法人税の支払い義務が生じる場合があります。

青色欠損金の繰越控除制度

青色申告をした法人は、欠損金(税務会計上では赤字のことを欠損金といいます)が生じた場合、翌事業年度以降へ繰り越しができます。つまり翌年度以降黒字になった金額から赤字金額を引いた差額が課税の対象になります。法人の資本金額によって繰越控除の限度額に違いがあり、期間も事業開始年度で改正がありますので確認をしてください。

☑中小法人(資本金1億円以下)→(H28)控除限度100%、期間9年 (H29)控除限度100%、期間10年
☑大法人(資本金1億円以上) →(H28)控除限度65%、期間9年 (H29)控除限度50%、期間10年

※事業開始年月日が平成28.4.1を(H28)、平成29.4.1を(H29)と表記

例:H27年度赤字500,000円 H28年度黒字1,000,000円の中小法人の場合、H28黒字1,000,000円−H27赤字500,000円=差額500,000円となり、H28年度の課税所得額は500,000円となります。

青色申告書とは決算申告時に税務署へ提出する書類のことです。申告書には白色と青色があり、青色申告書を提出した場合は、課税所得額の控除が受けられます。青色申告の控除額にも2通りあり、単式簿記の申告は10万円、複式簿記の申告は65万円の控除となります。
複式簿記の方が複雑なので、手間はかかりますが控除額も大きいです。単式簿記の方は手間はあまりかかりませんが、控除額は低くなります。白色申告も単式簿記なので、同じ単式簿記なら青色で申告した方がお得です。

申告書を青色で提出する場合はその年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりませんので、青色申告をする方は早めに申請書を提出しましょう。

税金が戻ってくる場合もある

「前期は売り上げが伸びて黒字だったが、今期は逆に赤字になってしまった。」そんな場合には前期に納めた税金が戻ってくる制度があります。青色申告書を提出する事業年度に赤字が発生した場合、その赤字を前年度に繰り戻して法人税額の還付を請求することができます。しかし、還付金請求ができるのは以下の条件をすべて満たしている法人に限られます。

☑1.資本金が1億円以下の法人
☑2.黒字の事業年度と赤字の事業年度、またその前事業年度まですべて連続して青色申告書にて確定申告をしていること
☑3.赤字になってしまった事業年度の青申告書をその年の提出期限までに提出していること
☑4.上記の3.の青色申告書を提出する際に欠損金の還付請求書も一緒に提出すること

還付金の計算法は、前年度法人税額×(今年度欠損金額÷前年度所得金額)=還付金請求額になります。

赤字でも法人税がかかる場合に注意

会計上赤字でも、税務会計上は黒字になることがあり、その場合は法人税がかかってきますので注意が必要です。会計上の所得金額は収入(収益)から人件費や設備費などの経費(費用)を引いた金額ですが、税務会計上では経費(損金)として算入できないものや、逆に収入(益金)として算入しなければいけないものもあるので、会計上と税務会計上では所得金額が異なります。
その差額によって会計上の利益は赤字でも、税務会計上の利益では黒字という現象が起こり、赤字の場合でも法人税を納めなくてはならなくなります。他にも、法人事業税と法人地方税の支払いも生じてきます。

☑収益とは、企業会計上の売り上げなどの収入
☑費用とは、企業会計上の経費などの支出
☑益金とは、税務会計上の収入
☑損金とは、税務会計上の支出

企業会計と税務会計とでは算入する項目が違うので「収益≒益金」「費用≒損金」となります。

法人税の課税所得金額について

法人税の課税所得金額の計算方法

法人税の課税所得金額は、「益金ー損金」で計算します。「益金」とは事業を運営する上で発生した利益で会計上でいう「収益」のことで、もう一つの「損金」とは給料や設備費など会計上の「費用」のことです。しかし企業会計と税務会計では算入する項目が違い、金額が違うので以下の通り計算します。

☑益金=会計上の収益+益金算入項目ー益金不算入項目
☑損金=会計上の費用+損金算入項目ー損金不算入項目
☑課税所得=益金ー損金

株式会社の場合は、株主総会で承認を得た決算書(企業会計の利益額)の利益をベースに課税所得金額を計算します。法人税法上、企業会計の利益額をそのまま「益金」額にすることはできませんので、加算項目と減算項目で調整をします。

☑課税所得=利益+加算項目ー減算項目

当期純利益に対する税務調整加算項目

「当期純利益」とは、会計上その事業年度で得た「収益」から経費などの「費用」を引き、さらに法人税等を差し引いた純粋な利益のことです。課税所得金額を「当期純利益」から計算する場合、その「当期純利益」は会計上のものなので、税務会計では「益金」とて算入するもの、「損金」として算入できないものを税務調整加算項目として「当期純利益」に足していきます。

☑純利益=収益ー費用

☑益金算入項目  会計上「収益」ではなくても、税務会計上「益金」として算入する項目
例:圧縮積立金取崩額、外国子会社の外国税額等

☑損金不算入項目 会計上「費用」ではあっても、税務会計上では「損金」として算入しない項目
例:交際費(中小法人の場合のみ800万円まで算入可)、役員賞与、法人税等

当期純利益に対する税務調整減算項目

課税所得金額を計算するために、加算項目とは逆で「当期純利益」から差し引く減算項目もあります。

☑益金不算入項目 会計上「収益」であっても財務会計上「益金」として算入しないもの
例:受取配当金、法人税等の還付金等

☑損金算入項目 会計上「費用」ではなくても、税務会計上では「損金」として算入できるもの
例:繰越欠損金、固定資産等の圧縮額等

「当期純利益」に対し、以上の加算・減算項目で調整して課税所得金額を計算します。

法人の地方税について

法人事業税と法人住民税

法人が納税しなければならない税金は、法人税以外にも法人事業税と法人地方税があります。法人税が国に納める国税なのに対し、法人事業税と法人地方税は地方自治体に納める地方税になります。法人事業税は利益にかかる税金で、計算式が「課税所得×法人事業税率」となりますので、課税所得が赤字の場合は支払い義務がありません。

法人地方税は、課税所得に乗ずる「法人税割」と、会社の規模によって金額が決まる「均等割」を足した金額になり、課税所得が赤字の場合でも「均等割」の分を支払わなければなりません。

2つの要素法人税割と均等割

「法人地方税」は「法人税割+均等割」で計算できます。「法人税割」とは課税所得金額に対し各地方自治体で決められた税率を乗じた金額のことで、所得の無い赤字の場合、支払いはありません。もう一つの「均等割」とは各地方自治体で定められている資本金額と従業員数が50人以上か以下かで決まる金額のことです。

「法人税割」は所得に乗じて発生するものなので、赤字の場合は支払いはありませんが、「均等割」は金額が決まっているので赤字でも黒字でも支払わなければいけない金額は変わりません。「法人税割」「均等割」、共に各地方自治体で税率・金額が違うので、自治体ホームページで確認してください。

赤字の場合は会計利益と法人税課税所得の相違に注意

法人を運営する上で赤字はできるなら避けたいものです。ですが赤字になってしまった場合には、法人税と法人事業税は支払わなくてもよくなります。しかし、注意する点もあります。会計上の利益と法人税法上の課税所得とでは金額に相違があるということです。
会計上赤字でも税務会計上で黒字ならば、法人税・法人事業税・法人地方税の3つの法人税すべてが課せられ納税義務が生じます。会計上の所得額と税務会計上の所得額の違いに注意して、税金の支払い漏れの無いようにしましょう。

公認会計士・税理士 伊藤 温志

開業8年で600社ものクライアントを有するエクセライク会計事務所の代表税理士。
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